契約書の Word を相手に返す前に:社内の変更履歴・コメント・削った案を片づけ、提案だけを送る
最終更新日:2026 年 10 月 27 日
要点:社内で回した契約書の案には、相手に出すつもりの修正のほかに、同僚や顧問の変更履歴とその名前、試して取り下げた文言、解決済みを含む社内のコメント、社内の人や文書管理の仕組みを示すプロパティが入っていることがあります。相手に返す写しは整った本文から作り、変更履歴は相手への提案だけにして、相手に向けて書いたもの以外のコメントは入れません。戻ってきた版は送った版と比べ、署名する写しには変更履歴もコメントも残しません。
この記事は、契約書を Word のファイルでやりとりする人のためのものです。取引先の案に修正を入れて返す会社、発注者の条件に答えるフリーランス、賃貸借の契約を扱う事務の担当者などです。扱うのは .docx が相手に運ぶものです。何を合意するかは、あなたと弁護士が決めることです。印影、押印欄、収入印紙のような紙の契約の話と、電子契約のサービスと、それがファイルに加えるものは扱いません。変更を承諾・却下する手順は変更履歴の承諾と却下の記事に、相手の弁護士が赤を入れる不動産の契約書は不動産の物件資料と契約書の記事にあります。自分の弁護士や税理士に送るのは別の場面で、弁護士・税理士に送る前の記事にあります。下の例は典型的な場合で、実際の事例を伝えるものではありません。
交渉中の案に入っていることがあるもの
| もの | ある場所 | 相手に分かること |
|---|---|---|
| 社内で回したときの修正 | 同僚や顧問が入れた変更履歴と、その名前と日時 | 社内でだれが見たか、それぞれが何を望んだか |
| 取り下げた文言 | 変更履歴の削除した文字。出してから却下した変更は消えますが、まだ処理していない変更は残ります | 出してもよいと考えていた上限、金額、条項 |
| 社内のやりとり | コメント。解決済みのものを含みます | 「支払いは 60 日までなら可」「最後は独占の条項を外す」 |
| 扱った人 | 作成者と最終更新者、コメントと変更履歴に付く名前 | こちら側の担当者の名前 |
| どこから来たか | カスタム プロパティ、ドキュメント サーバーのプロパティ、テンプレートの名前とパス | 案件の番号、別の取引先の名前、社内のサーバーの名前 |
一つのファイルに、2 種類の変更履歴
交渉では、変更履歴に二つの役目があります。一つは提案で、相手は一つひとつを見る必要があり、赤を入れて返すのが当事者のやりとりの形です。もう一つはこちら側の作業の跡で、同僚の最初の案、顧問の別の言い回し、だれかが入れて別の人が直した数字です。社内で回したファイルでは、両方が並んで入っていて、どれにも書いた人の名前が付いています。Microsoft のページ「ドキュメント、プレゼンテーション、またはブックの作成者名を変更する」は、「また、[ユーザー名] 設定には、コメントと変更履歴に表示される名前と頭文字が指定されます。」と書いています。
表示を変えても、二つは分かれません。Microsoft のページ「Word で変更履歴を記録する」は、[オリジナル]の表示について「ただし、すべての承諾、拒否、または削除されていない変更履歴やコメントは文書内に残ります。」と書き、印刷についての節で「変更を非表示にしても、文書から削除されることはありません。」と書いています。Microsoft のページ「Wordで追跡された変更を承諾または拒否する」は、「[ マークアップなし] ビューを選択すると、変更が一時的に非表示になります。 次にドキュメントを開くと、再び表示されます。」と書いています。[変更履歴とコメントの表示]で種類のチェックを外しても、自分の画面の表示が変わるだけです。「Word で変更履歴を記録する」のページは、その場合も「自分または校閲者が文書を開くたびに変更履歴とコメントは自動的に表示されます。」と書いています。
提案だけを相手に送る
相手に提案だけを送るには、整った二つの本文から Word に違いを出させるのが分かりやすい方法です。
- 相手が最後に送ってきた版を、届いたままの形で取っておきます。
- 作業用の写しで、社内のやりとりを片づけます。変更履歴をすべて承諾するか拒否して、相手に出したい文になるようにし、コメントを削除します。
- 二つを比べます。Microsoft のページ「法的ブラックライン オプションを使用してドキュメントの違いを比較する」は、このオプションが「2 つのドキュメントを比較し、それらの間で変更された内容を 3 番目の新しいドキュメントに表示します。」と書き、「比較中のドキュメントは変更されません。」と書いています。[元の文書]に相手の版を、[変更されたドキュメント]に片づけた写しを選びます。このページは Windows 版の Word のものです。Mac では、Word 2019 for Mac のページ「変更前の文書と変更後の文書を比較および結合する」が、[校閲]タブの[比較]から文書を比べる手順を示しています。どちらかの版に変更履歴が残っていると、法的ブラックラインのページのとおり、Word はそれを確定してよいかを尋ね、そのあと「変更された文書の変更が変更履歴として表示される」新しい文書を示します。
- 比べるときのオプションでは、「コメント、書式設定、テキストの変更など」の何を比べるかを選べます。送る前に新しい文書のコメントを見て、相手に向けて書いたものだけを残します。
- 新しい文書では、変更にだれの名前が付いているか([校閲]タブの[変更履歴とコメントの表示]→[特定のユーザー]に校閲者が並びます)と、下のプロパティを確かめます。
相手のファイルに直接[変更履歴の記録]をオンにして手を入れるほうがよいなら、同僚が作業したファイルではなく、相手の版の新しい写しで行います。そうすれば、その中の変更は、相手のために入れたものだけになります。
コメント:相手に向けたものと、社内のもの
変更の理由を相手に伝えるコメント(「第 9 条に合わせて修正」)は提案の一部です。同僚どうしのコメントはそうではなく、いちばん多くを語ることがあります。どこまで譲れるか、相手の前の案のどこがおかしいか、次に何を譲るか、です。解決済みにしてもファイルからはなくなりません。Microsoft のページ「Wordでのモダン コメントの使用」は、コンテキスト ビューでは「解決されたコメントは非表示になる」一方、リスト ビューには「アクティブなコメントと解決されたすべてのコメントが含まれます」と書いています。送る写しでリスト ビューを開き、相手に向けて書いたもの以外のコメントをすべて削除します。
隠し文字、プロパティ、文書管理の仕組み
Microsoft のドキュメント検査のページは、Word のファイルが持つことのあるものをほかにも挙げています。
- 「Word 文書には、隠しテキストとして書式設定されたテキストを含めることができます。」起案の覚え書きや、あとで使うために取ってある別の条項がこの方法で隠れていることがあります。同じページは、このインスペクターでは「他の方法では非表示にされたテキスト (たとえば、白地に白いテキスト) を検出できません。」とも書いています。
- ドキュメントのプロパティには「最後にドキュメントを保存したユーザーの名前」のような自動で管理される情報が含まれ、使う機能によっては、文書に「校閲者への送信に関する情報、回覧用紙、テンプレート名など」が含まれることもあります。
- 「ドキュメント管理サーバー上の場所」に保存した文書は、「このサーバーの場所に関連する追加のドキュメント プロパティまたは情報」を含んでいる可能性があり、文書には「文書自体には表示されないカスタム XML データ」を含めることができます。
Microsoft のページ「Office ファイルのプロパティを表示または変更する」は、「カスタム プロパティは、Microsoft 365 ドキュメントに対して定義するプロパティです。」と書いています。別の取引のファイルから作った契約書では、その取引の案件番号や取引先の名前が入ったままのことがあります。一つずつはWord のプロパティに残る会社名とテンプレートの記事に、コンテンツ コントロールが持つデータとテンプレートのパスはWord のカスタム XML と埋め込みの記事にあります。
案が戻ってきたら
戻ってきた案で分かるのは、相手が変更履歴として残したものです。相手が変えたものすべてが見えるとは限りません。「Word で変更履歴を記録する」のページは、[変更の追跡]がオフのとき「Word による変更内容のマーキングは停止されます」と書いています。記録をオフにして入れた変更は、うっかりでもそうでなくても、こちらの文と同じに見えます。何かを承諾する前に、戻ってきたファイルを送った版と、上と同じ方法で比べます。比べると、本文、書式、コメントなど Word に比べさせたものの違いが、変更履歴として残されていたかどうかにかかわらず示されます。法的ブラックラインのページが比べる対象として挙げるのはコメント、書式設定、テキストの変更などで、プロパティや埋め込みオブジェクトの中のデータは挙がっていません。
戻ってきたファイルには、相手側の名前や、ときには相手の社内のコメントも入っています。それは相手の問題です。次の回は、相手のファイルにこちらの作業を重ねるのではなく、片づけた写しからやり直します。
署名する写しと、PDF で送るとき
署名する写しには、合意した本文だけを入れます。変更履歴はすべて承諾するか拒否し、コメントはすべて削除し、[変更履歴の記録]はオフにします。相手が変更履歴をロックしているなら、「Word で変更履歴を記録する」のページは「変更履歴がロックされている間は、変更の追跡をオフにしたり、変更を承認したり元に戻したりすることはできません。」と書いているので、ロックを外してもらうか、片づけた写しを送ってもらい、それを最後に合意した案と比べます。
署名する写しを PDF で送ることもよくあります。Microsoft のページ「Office デスクトップ アプリで PDF または XPS に保存または変換する」は、Word のオプションについて「変更履歴を PDF に含めるには、[発行対象] の下で [変更とコメントの内容を含む文書] を選択します。」と書き、含めないときは[文書]を選んでおくように書いています。また「PDF に文書プロパティを含める場合は、[文書プロパティ] が選択されていることを確認します。」と書いています。PDF にプロパティを入れたくないなら、[オプション]でそのチェックボックスを見つけて外します。それでも変更は先に Word で処理します。PDF はその時点の本文から作られ、.docx は手元に残って、次の案の元になることが多いからです。PDF に残るものはPDF に書き出すと残る作成者とメタデータの記事にあります。
案を相手に返す前の手順
- 作業用のファイルと、相手が最後に送ってきた版を、どちらもそのまま取っておきます。
- 作業用のファイルの写しで、変更履歴をすべて承諾するか拒否し、コメントをすべて削除し、[変更履歴の記録]をオフにします。
- 相手の版(元の文書)とその写し(変更されたドキュメント)を法的ブラックラインで比べ、できた新しい文書で作業します。
- 新しい文書でコメントの一覧を開き、相手に向けたコメントだけを残します。隠し文字を表示し、提案に入らないものは削除します。
- Windows なら[ファイル]→[情報]で作成者と最終更新者を見て、[プロパティ]→[詳細プロパティ]で、この写しに合わないタイトル・件名・キーワード・コメントと[カスタム]タブの値を消します。Mac での確かめ方は隠しデータの種類と確認方法の記事にあります。
- Windows なら、そのあとドキュメント検査([ファイル]→[情報]→[問題のチェック]→[ドキュメントの検査])で、ドキュメントのプロパティと隠し文字を取り除けます。[コメント、変更履歴、バージョン、および注釈]は、[検査]の前にチェックを外すか、検査のあとでその[すべて削除]を選ばずにおきます。選ぶと、提案である変更履歴まで消えます。Microsoft は、ドキュメント検査で削除したデータは元に戻せないことがあるので、元の文書のコピーで使うよう強く勧めています。終わったら、変更履歴に付いている名前をもう一度見ます。
- ヘッダーとフッターを読みます。「社内検討用」のフッターや、フィールドで入れたファイルのパスは見落としやすいものです。
写しを自分で確かめる
- 写しを[すべての変更履歴]の表示とコメントの一覧で開きます。[校閲]タブの[変更履歴とコメントの表示]→[特定のユーザー]に並ぶ校閲者が、思っている名前だけかを見ます。
- もっと詳しく見るなら、もう一つ写しを作り、拡張子を .zip にして展開します。
word/document.xmlと、ヘッダー・フッター・脚注・文末脚注の部品で、<w:insと<w:delにはそれぞれw:authorと、たいていw:dateが付いています。削除した文字はw:delTextの中にあります。移動と書式の変更の印のw:moveFrom、w:moveToと、名前がPrChangeで終わる要素も探します。名前と日時が残る場所の詳しい確かめ方はWord の変更履歴とコメントに残る名前と日時の記事にあります。word/comments.xmlにコメントが、word/people.xmlにはコメントを書いた人や変更した人が並ぶことがあります。docProps/core.xmlに作成者と最後に保存した人が、docProps/app.xmlに会社・管理者・テンプレートの名前が、docProps/custom.xmlにカスタム プロパティが、customXmlのフォルダーに文書管理の仕組みやコンテンツ コントロールが持つデータがあります。word/_rels/に添付したテンプレートのフルパスが、settings.xml.rels word/settings.xmlに文書変数(w:docVars)が入っていることがあります。
- 写しに入っていてはいけない社内のやりとりの数字、名前、言い回しを、すべての部品で検索します。
ScrubDrop がすること
ScrubDrop は .docx をブラウザーの中で読み、ファイルはアップロードしません。見つけたものを一覧にします。変更した人の名前が付いた変更履歴、書いた人の名前が付いたコメント、カスタム プロパティを含むプロパティ、隠し文字、編集セッションの ID、カスタム XML と文書変数と、そのほかの扱う種類です。無料版は 1 回に 1 ファイルで、プロパティとコメントを取り除き、変更履歴は承諾して取り除きます。文書管理の仕組みがカスタム XML のデータとして持つサーバーのプロパティは、カスタム XML と一緒に残り、それを取り除くのは Pro だけです。ScrubDrop Pro では、変更履歴をすべて拒否すること(画面の表記は「元に戻す」)や、作成者ごとに承諾するか拒否するかを選ぶことができます。たとえば、ある同僚の変更は承諾し、別の同僚の変更は元に戻す、という選び方です。
ScrubDrop は、扱う変更履歴をすべて処理します。一部を変更履歴のまま残すことはしません。提案を変更履歴として見せて返す写しは、上のとおり Word で用意し、ScrubDrop では「変更履歴」のチェックを外して、変更履歴はそのままにプロパティを取り除きます。コメントは全部取り除くか全部残すかです。相手に向けたコメントがいくつかあるなら、「コメント」のチェックも外し、ほかのコメントは Word で削除します。署名する写しでは、どちらもチェックを付けたままにします。
ScrubDrop Pro では、隠し文字、編集セッションの ID、カスタム XML と文書変数、添付したテンプレートのパスを含む他のファイルへのリンクも取り除きます。隠し文字の書式を直接付けたのではなく、スタイルや文書の既定で文字を隠している文書は、隠し文字を取り除くことを選んだとき、どの文字がそれに当たるかをまだ正確に判断できないので、その旨を示して断ります。先に Word でスタイルの隠し文字の書式を外すか、「隠れたシート・行・列・スライド・図形・文字」のチェックを外してください。定型句(文書パーツ)を含む文書も断ります。ScrubDrop は版どうしを比べません。処理する変更履歴のほかは見えている本文を変えず、何を合意したかも知りません。案を読むのはあなたです。掃除したファイルは、書き出しに使ったものとは別の読み取りのソフトウェアで読み直し、確認を通らないファイルは渡しません。
よくある質問
[マークアップなし]にしておけば、社内の変更は相手に見えませんか?
見えます。Microsoft のページは、[マークアップなし]では変更が一時的に見えなくなるだけで、次にドキュメントを開くと再び表示されると書いています。送る写しで変更を承諾するか拒否し、変更履歴は相手への提案だけにしてください。
社内の変更を入れずに、こちらの提案だけを送るにはどうしますか?
写しで社内の変更を処理してコメントを削除し、相手の最後の版とその写しを Word の法的ブラックラインで比べます。新しい文書には違いだけが変更履歴として示されます。送る前に、そのコメントとプロパティを確かめてください。
相手が変更履歴を残さずに直したかどうかは、どう確かめますか?
戻ってきたファイルを、送った版と比べます。[変更の追跡]がオフだと Word は変更に印を付けないので、記録のない修正はふつうの文に見えます。比べると、本文、書式、コメントなど比べさせたものの違いが、記録の有無にかかわらず示されます。
出典:このページからリンクした Microsoft のページは 2026 年 10 月 27 日に確認しました。ScrubDrop は Microsoft と提携していません。このページは法律上の助言ではありません。
案を相手に返す前に確かめてください。ブラウザーの中で動き、アップロードしません。無料版は 1 回に 1 ファイルで、ScrubDrop が扱う種類のうち見つけたものはすべて一覧にし、プロパティ・コメントを取り除き、変更履歴は承諾して取り除きます。ファイルを確認